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『師弟関係』の善し悪し。・・・ホテル、旅館に関して、危惧すること。

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 先ず、一般的なホテルに関して考察すると、料飲部は大きく分けて、洋食、和食、中華の三種がメインとなる。洋食においては、帝国ホテルのように個別直営レストランがなければ、フレンチやイタリアンが入り乱れた状態となる。時には、イタリアンと中華が合体している食事処もあるほどだ。言葉は悪いが、『ファミレス』感覚となっている。

 或るレストランを見ていて、ふと気づかされたことがあった。大変重大な問題点として、経営側の人間に『美食家』が少ないことであった。よって、料理メニューの客観的な評価ができないどころか、お客ニーズの緻密な分析を完全に怠っているように思えてならない。

 口喧しい、株主や社外取締役の一言で、右往左往している。客層は千差万別。そこで個人的な嗜好にてサジェッションをするのが罷り通るのであれば、そのレストランは私物化されてしまい、更に、料理長の意見も通らぬとなれば、空中分解してしまうのがオチとなる。

 更に更に悪いことに、自らが雇われ経営者であるにも関わらず、職位を強調するがあまり、ベテラン料理人たちを、弟子たちが『敬愛の念』を抱くような環境を確保していないのである。従って、些細なことで、弟子たちの夢が断ち切られ、料理人を辞めてしまい、別の職種に就くこともしばしばとなっている。

 いくらリゾートホテルやシティホテルと雖も、そこには土地柄というものがある。普段利用しているお客の『舌』を本当に理解しているのか否か。多分に、雇われ経営者たちは、自分が育った土地を中心に、視野狭窄にて、グルメのキャリア不足にて、料理自体を見ている危険性も無きにしも非ず。これでは、客が満足できるメニュー展開となり難い。

 ドイツ人が総料理長であるシティホテルでは、何処かにドイツの風が吹く。また、フランス人であったり日本人であったりと、その総料理長の好みや得手不得手が見え隠れするようなレストランも少なくはない。まあ、それはそれとして、異国の風が吹くのならば、食は新鮮でもあり楽しいものだ。

 ここで標題の『師弟関係』について考察したい。ご存知の通り、洋食と和食、そして中華は、それぞれに『師弟関係』のカラーや慣例が異なる。よって、ボスがオーナーシェフか、雇われシェフかによっても、環境も条件も全く異なってくる訳だ。

 ホテルであれば、それぞれの職位に対する給与体系があろうから、料理長であっても、セカンドであっても、ペイペイであっても、与えられた職位に見合ったサラリーを貰っているはずだ。(?)

 しかし、オーナーシェフが営むレストランとなれば、『師弟関係』がしっかりとしているが故に、弟子たちの待遇は良い時はすこぶる良く、悪い時は『我慢』の一声となるに違いない。勿論、覚悟をもって修行しているのだから、仕方ないと言えばそれまでだが。

 『和食の世界』ついて見ると、今も尚、地方の歴史ある食事処の二代目、三代目などは、東京や大阪、京都の有名老舗へ修行の旅に出る。それから数年後、現地で学んだものを故郷に持ち帰り、自分の父親の後を継ぐことになるが、これは一つのパターンらしい。

 ホテルの料理人について検証すると、実は、とても仲のいい同僚だとしても、全て『ライバル』であり、その『ライバル』を蹴落とさない限り上には登れず、先輩後輩の縦の関係などに固執せず、『実力主義』の『下剋上』を意識している元気の良い人間も多々いる。何とも、頼もしい。

 オーナーシェフが際立って凄腕の料理人でもあり、有能な経営者でもあるのならば、『暖簾分け』を積極的に進めるシェフも少なくはない。筆者の知る限りでは、京都の或るフレンチレストランのオーナーは、適時にきちっと『暖簾分け』を行い、東京進出から京都へ単独で戻ってきている。東京店はセカンドに譲ったと言う。実に、素晴らしい人物である。

 現在のようにニューノーマルな『天災の時代』に、この理想的な『師弟関係』が成り立つのが大変難しくなっているのではないか。下手をすると、旅館やホテルを追われた料理長が、弟子を根こそぎ連れ去って、厨房が完全空の状態になり、生産性が根こそぎ削がれて、経営が破綻する。

 十数年前に、或る旅館のオーナーから相談を受けたことがあった。それは、和食料理長が「オーナーと同額の給与を出さねば辞める!」と脅したと言う。結局、その料理長はスパッと辞めたのだが、案の定、若手の弟子を全員連れ出したのだった。因みに、その旅館は数年後廃業に追い込まれた。

 また、1964年の東京オリンピック頃の話だが、或る有名外資系シティホテルのドイツ人総料理長が弟子半数を連れ去り、新設予定のハイカラなシティホテルに身売りしたと言う。今で言う、ヘッドハンティングである。

 慌てた外資系シティホテル経営陣は、入社時に『シェフ希望』を提出していたが、他部署にいる社員に打診し、急遽、料飲部への異動を行い、空白となった厨房を全て埋めたという逸話が残っている。

 上のように、和食料理長にしても、ドイツ人総料理長にしても、『師弟関係』の良し悪しが見え隠れしていることになる。そこでボスを『師』と仰ぎついて行った弟子たちが皆育てば良いが、殆どの者が、後々、バラバラになったような気がしてならない。

 そこが、雇われの総料理長とオーナーシェフとの大きな違いではなかろうか。弟子の生活や人生が掛かっているのだから、最後まで面倒を見るのが、伝統の『師弟関係』であり、『師』の重責であったと思われる。

 この時代の若者たちは、欧米の影響か、『転職こそ美徳なり』で『A rolling stone gathers no moss.』と考えぬ人が多いように思えてならない。よって、今までのような古き『師弟関係』を全面的に受け入れる体質は皆無に等しいと言っても、過言ではなさそうだ。

 この時代において、『師弟関係』は善し悪しだが、少なからずとも、双方共に『大きな信頼関係』により成り立つものなので、そこに加えて『敬愛の念』があるのならば、いつの日か、『師』を超える腕の良い職人が次から次へ生まれることになると確信する次第。


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写真・文責:西田親生

                   

  • posted by Chikao Nishida at 2022/9/15 12:00 am

幻の蕎麦屋『木阿彌』・・・数年前に、ご自宅を訪ね食した、最後の十割蕎麦。

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▼蕎麦打ちの指導をする中原邦雄さん
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 蕎麦屋『木阿彌』の中原夫妻(中原邦雄さん、千枝子さん)と出逢ったのは、2016年5月20日。熊本県玉名郡和水町にある『肥後民家村』の入り口に、店を構えていた。

 ご夫婦で全国行脚して、本物の『蕎麦』を食べ歩き、修行した後に、出店を決意したと聞いている。それから数年後、或る日突然、同町担当者や町長から、『カレー街道』の構想を優先するために営業継続阻止されたのである。よって、2017年6月25日で営業終了となった。

 新聞でも取り上げられ、今でも理不尽なる継続阻止について疑義を持っている。『高齢者追い出し』のような流れでもあり、署名活動もあったと聞き及んでいる。それから、当時の担当者は人事異動で他課へ、町長は現役を退いた。何とも無責任極まりない、田舎行政らしい『愚策』である。

 この中原さんの笑顔をご覧いただければお分かりであると思うが、とても温厚で努力家。『本物』を徹底追究する情熱は素晴らしく、ご夫婦の二人三脚の姿はすこぶる微笑ましい。

 その後、コロナ禍になる前までは、福岡県大牟田市のご自宅で『蕎麦道場』を開催しては、多くのファンが訪れていた。筆者も御多分に洩れず、足を運び入れ、懐かしい中原流の『十割蕎麦』を堪能したのである。

 この『日本文化』の伝承を拒む基礎自治体があるのだから、驚きである。これは私見であるが、どう逆立ちしても、『生蕎麦』と『カレー』を比較しても(比較にならないが)、『肥後民家村』へ観光客を呼び込みたいのであれば、当然の如く、『生蕎麦』に軍配が挙がる。

 現在、蕎麦屋『木阿彌』の場所には『カレー』の店がある。それ以来、心も折れて、『肥後民家村』へ足を運ばなくなってしまった。理由はお察しの通り、全くコンセプトの違う食事処があれば、魅力も何も湧かなくなってしまった。 

 先ほど、奥様の千枝子さんに連絡と取ったところ、来年から月に一度、二度ほどの『蕎麦道場』の再開予定という吉報が届き、ワクワクしながら記事を書いているところである。

 ご夫婦や娘さんとの再会を楽しみにしている次第。

◎以下は、2019年3月21日にご自宅を訪問した時のもの

▼麦打ちの手本を示す中原邦雄さん
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▼蕎麦打ち完了
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▼左から、中原千枝子さん、中原邦雄さん
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▼三種の蕎麦を楽しむ
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▼この『蕎麦かき』が最高
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▼2016年5月20日撮影した当時の店構え
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  • posted by Chikao Nishida at 2022/9/14 12:00 am

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