
この一年、特に、震災後の半年間に、わが故郷である山鹿市を訪れたのは数え切れないほど、毎日のように足を伸ばした。その目的は、故郷の隠れた観光資源のリサーチと写真展(個展)準備の為でもあった。
今回、たまたま立ち寄った、九十年の歴史を誇る自転車専門店「有働サイクル」(熊本県山鹿市下町)。引き戸を開けて挨拶をすると、筆者の撮影依頼に対して、快く応じてくれた、愉快な親子。
撮影している内に、2灯付きママチャリ、四十年以上経ったレトロな自転車や古い看板の解説をしてくれた。ファインダーを覗くと、おっしゃる通り、ベルやペダルなど細かい錆が浮き出してはいるものの、重厚な自転車のパーツ一つ一つの存在に衝撃を受けた。
笑顔が絶えない、「有働サイクル」。何気に話をしていると、世話をかけた幼友達との繋がりが出てきたり、幼い頃の紙芝居、菊池川での遊泳、駄菓子屋、さくら湯と湯の端(当時)などで、話が盛り上がり、思いの外、長居をしてしまった。ちなみに、5歳の頃に遊びに行った家が、その自転車屋さんの隣だったことも判明した。
取材をしながら、その場で染み染みと感じのは、言葉に尽くしがたいほどの、「小さくて大きな幸せ」の存在である。動かなくなったものを動かす、古いものを磨いて新品同様に大切に扱うという、ものづくり日本の凝縮版がここにある。店主やその息子さんの笑顔を見ていると、ズバリ、「贅沢せずとも、元気一杯、楽しい生活を送ってますよ!」と・・・言霊が伝わってきた。
バブリーな時代を経験し、物欲、金銭欲などに染まり狂った日本人が、遠の昔に忘れ去ってしまった「小さくて大きな幸せ」を、今回の取材で教えて頂いたような気がしてならない。そこには、ゆったりとした時空の中で、腹を抱えての笑いがあり、エンドレス・ドミノ倒しのような語りがあった。
▼レトロな自転車

▼有働サイクル付近の街並み

▼取材ランチ:ひろ瀬(温泉プラザ山鹿1階)550円

▼取材風景

◎ロゼッタストーン公式サイト(since 1995)
http://www.dandl.co.jp/

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