
熊本地震から9ヶ月経つが、泰勝寺は未だ八割以上が立ち入り禁止規制のままである。昨年の今頃は、青い鳥・ルリビタキの撮影に成功したが、今回もまた八割規制が解除されず、溜池の手前から真鴨たちを眺めるだけに終わった。
鴨たちは、何やら溜池の淵近くに集まり、時折、数羽が土手に飛び出しては、枯葉の中に潜む虫や木の実を食べている。しばらく突いているかと思うと、すぐに溜池に着水し戻るのだ。
歩いて近づくと、彼らはじわっと逆方向へと遠のいて行く。こちらが蹲み込んでカメラを構えてじっとしていると、また、じわじわと元の場所に戻ってくる。やはり野生の鴨たちには、彼らなりの「距離感」があり、人間との許容半径は10mくらいが限界ではなかろうか。
人間社会では、この「距離感」が全く理解できない人も居る。「距離感」と言う概念さえ頭にない人間は、そのSNSの呟きを見ても、上から目線で常に主役を演じる横着者も居て、読むに耐えない。特に「先生」と呼ばれたい輩の、全てを包括するような「距離感」には閉口するばかり。・・・単なる身の程知らずということになる。
「距離感」とは、自らの防衛本能におけるテリトリー死守の範疇でもあり、逆に、相手のテリトリーを土足で踏み込まぬセキュリティー認識でもある。よって、心地よい人生を歩むか否かは、その「距離感」の塩梅によってくる。
情けないが、SNSなどの出逢い系で事件事故が絶えない時代になっているけれども、これもまた、迂闊にも「距離感」の認識のなさが一つの要因となっている。野生の鴨でさえできることが、現代の日本人にできないとは、これ如何に!?・・・平和ボケもそろそろ払拭しなければ、どんなに念じても、良き時代は戻ってくるはずがない。


▼取材ランチ・・・熊本ホテルキャッスル ダイニングキッチン九曜杏

▼取材風景(70-200mm f2.8のレンズを使用)

Comments