
芝居小屋 八千代座のマーク(写真上)は、年代を感じさせるもので、実に面白い。「八つの千がヨを囲んでいる=八千代座」という事だ。
我が国の国歌は「君が代は 千代に八千代に さざれ石の いわおとなりて こけのむすまで」とある。この短いフレーズの中に、「八千代」、「さざれ石」、「いわお」が、この芝居小屋の呼称に関係があるのではないかと考えてみた。
実は、山鹿市には巨岩の山 不動岩というものがあり、それは、「さざれ石」、「いわお」そのものなのである。誠におめでたい名称だと、今更ながらに頷いた。
八千代座は100年以上の歴史と伝統を持つ、全国でも数少ない地方の芝居小屋である。一時期は、崩壊しそうにボロボロになっていた八千代座。その復元には色んな方々の苦労があったけれども、現在、威風堂々としたトラス構造の巨大建造物(木造)として、一見の価値ある名物芝居小屋となっている。
先ずは、正面回り舞台の奈落に潜ることに。驚いたことに、鉄製のレール側面に1910年にドイツのクルップ社が製造した刻印があった。100年経っても錆一つなく、人力回り舞台を支えているのだ。これは人伝てに聞いたことだが、八千代座が復元される頃に、現在のクルップ社から視察団が訪れ、自社製品が現役で動いていることに歓喜したと言う。
次は、奈落から玄関の方に続く細いトンネルを進むことに。丁度、花道の真下の通路となっているが、中ほどに「すっぽん」の看板があった。4人の人力で、役者を奈落から花道へ担ぎ上げる装置である。これまた、人力というところがアナログでいい感じだ。
地下の探索を終え、桟敷席の中央に座ることにした。見上げると、当時の広告看板が天井を埋め尽くしている。正方形の広告で、当時のハイカラな店舗の広告コンテストのようにも感じた次第。
桟敷席は当時の人たちのサイズに合わせてあるのだろうか、思ったよりも狭い。桟敷を仕切る木の表面を見ると、小さい焦げ跡のような黒点を発見。聞けば、当時の観客がキセルで煙草を燻らした後に、その仕切りの木の上に「パンパン♪」と煙草の燃えかすをのせていたようだ。今なら「禁煙!即、退場!」となるに違いない。
ずいぶん前に取材した時のこと。当時のトイレが全て豪華有田焼で作られていたのに、腰を抜かしてしまった。(現在、どうなっているのか知る由もない)・・・
まだまだ、この芝居小屋を探索すると、驚くような仕掛けやエピソードなどありそうだが、また、次回の楽しみにしておこうかと。
▼奈落


▼すっぽん

▼天井の広告

▼八千代座の赤提灯

▼桟敷席

▼雨風で揺れる屋外の赤提灯

▼取材風景

◎芝居小屋 八千代座サイト(powered by D&L Research Inc.)
https://www.dandl.co.jp/gold/yachiyoza/

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