
山鹿市立博物館に足を運び、古墳時代や西南の役などの展示物を拝見することにした。
小さな博物館だが、私には思い入れのある博物館だ。実は、約二十年前に、装飾古墳で有名なチブサン古墳のCGシミュレーション動画を寄贈したところでもある。ちなみに、全国の装飾古墳の4割近くが、熊本県に点在している。
当時、中央では欽明天皇陵をCG化するプロジェクトがあって、微力ではあるが、当社のCG制作力をもって、地元にあるチブサン古墳のシミュレーション動画の制作をもくろみ、完成した動画を山鹿市(当時の中原市長)と同博物館に2本ビデオテープを寄贈したことがあった。
お陰で、各新聞社やテレビ局からの取材があり、私が企画したものが、手前味噌であるが、少なからずとも生まれ故郷のPRに繋がったと自負する次第。
その博物館も随分老朽化した。しかし、多くの古墳に囲まれた同館に足を運ぶと、当時のことを思い出したり、盗掘された壁面(一枚)の行方を考えたりと、とても懐かしく心が落ち着くところでもある。
帰り際に何気に置いてあった小さなピアノに目が行った。じろじろ見ていると、館長が説明に来てくれた。
何と、1924年頃(大正時代末期)に、山鹿市の木工所職人だった木村兄弟が製作したピアノらしい。鍵盤も象牙製。軽く鍵盤を抑えた音が、とにかく透明感があり、こんなに立派で豪華なピアノを、山鹿の職人が作ったと聞けば、とても誇らしく思えてならない。
当時は、国産アップライトピアノが650円、スタンウェイなどの輸入ピアノが1600円で(当時の公務員の初任給が60円の時代)、とても庶民の手が届くものではなかったようだ。
館長から特別に取材許可を得て、鍵盤を叩いてみた。ちょろんとビートルズのヘイジュードの頭の部分だけ弾かせて貰ったが、手触り、鍵盤(象牙)の重みと戻り、奏でられる音色に驚いてしまった。失礼な話だが、片田舎の山鹿で製造されたピアノとは思えぬほど、完成度が高いことに、また、当時の兄弟職人の腕がとんでもないことに気付かされた。
蛇足だが、私が自宅に持っている電子ピアノ(本格的な造りの結構なお値段のYAMAHAピアノ)でさえも、その生の音には敵わぬことがよく分かる。今回の取材では素敵な発見があり、すこぶる清々しい気持ちで帰途についた。


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