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本物のプロ意識とプロ職人・・・

▼加藤神社(熊本城内/書は松尾美由紀さん)

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 本日早朝から、NHK再放送番組の「プロフェッショナル/仕事の流儀」を見ていた。実は、錦織圭の全豪オープンの録画放送を見終えて、そのままぼーっと惰性で見ていたのだった。しかし、どんどんと引き込まれるというか、自分の足跡を振り返りながら、いつの間にか、その番組に入り込んでしまったのである。

 http://www.nhk.or.jp/professional/2015/0119/index.htmlLink

 再放送されたのは、「かけつぎ職人 松本孝夫さん」のドキュメンタリーだった。・・・端々に、胸を打つ言葉が遠慮なしに飛び込んできた。「頼まれたものは、断らない!」。「この服には依頼人の何か強い気持ちが伝わってくる!」・・・一つ一つの言葉の強さが、異常なまでに筆者の心に突き刺さってきたのである。

 匠の技とか、拘りの職人とか、そんな軽々しい言葉では形容できない、奥深く、野太く、そして底なしのように温かい心が伝わってくるのである。正直なところ、筆者のボキャブラリーでは、的確に表現できないほどのものだった。

 兎角、日本という国は、無意識の内に「職業差別」をしている、妙な国だ。そして、「職業差別」を大声で語りたがる輩がわんさといる。だから、行政や公的機関にぶら下がって、自分自身を大きく見せようと、外面ばかり、体裁ばかりを気にする、素人集団がこれまたわんさといる訳だ。◯◯コンサル、◯◯コーディネーターと・・・情けないほどの、ずぶの素人が、お構いなしに大手を振ってインチキ商売をしている。周囲に火の粉を散らしてでも、後ろ足で砂を掛けようが、私利私欲だけで動いている輩が沢山いる。

 今回の番組で、すこぶる印象深かったのは、脳梗塞を患い右半身不随となった66歳のご婦人が、かけつぎを依頼してきた赤いカーデガンだった。話によると、昔々、その女性のお母さんが結婚祝いにプレゼントしてくれた、唯一の大切な思い出のカーデガンらしい。数十年も愛用しているがあまり、ボロボロとなっても、ずっと着ていたらしい。

 時代を経れば、全く同じ編み方や同じ色の毛糸は皆無に近いと言う。それでも、「かけつぎ職人」はとことん気が済むまで、かけつぎに専念する。依頼された赤いカーデガンはボロボロとなっているために、かけつぎ料38,000円が掛かるらしい。しかし、どうにかして直して欲しいと、その赤いカーデガンのかけつぎを依頼したのである。その言葉を聞いて、その職人は「このカーデガンは何かがあるんです。今だったら38,000円も出せば、新しく良いカーデガンが買えるでしょ!?・・・でも、何かがあるんですよ!」と。

 数日が経過し、かけつぎを施され出来上がった赤いカーデガンが、そのご婦人に届けられた。・・・手にしたそのご婦人は、感涙に咽びながら、その赤いカーデガンを抱きしめて、亡くなったお母さんを思い起こし、そのカーデガンに染み込んだ母の愛に対して、感謝の言葉を何度も何度も繰り返していた。

 家庭が貧しく、高校も中退し、母親の内職であった「かけつぎ職人」を選んだ松本さん。・・・筆者は、今までに見たことがないような「プロの哲学」を目の当たりにしたのだった。自分が考えていたプロ像、自分が胡座をかきつつあったプロ像・・・何とちっぽけで、何と不甲斐ないものだったかを思い知らされた次第。

 筆者は新聞社を経て、独立して25年目に入ったが、その「かけつぎ職人」である松本さんは、かけつぎ歴50年。合成繊維などが台頭し、周囲からは「そんな仕事あるの?」とか「仕事になる?」とか、心ない輩たちが、見下すように罵詈雑言を放ったらしい。しかし、今では全国から毎日100着ほどの依頼を受注する「かけつぎ専門店」となり、依頼主にとっては思い出深い、お金に換え難い大切な衣服に命を注ぐ仕事を全うしているのだ。

 本当に、本気で見入ってしまった。気づけば、目が腫れるほど涙が流れていた。何故???・・・プロと胡座をかいていた自分が、あまりにも小さく見えて来たからだ。人が喜ぶ仕事を本気で遣って来たのか否か・・・自責の念にかられてしまった。

 一言で、自分自身が情けない。どうしても体裁を重んじ、自らをボロ雑巾のように動かしていない。・・・あの赤いカーデガンの左袖がやけに擦れているのが気になる松本さん。実は、その依頼主は右半身が不随となっており、右手は動かず、左手だけで生活をしているために、特に、カーデガンの左袖が痛んでいたのだった。依頼主が大病に倒れたことなど知る由もない松本さんだが、その左袖のかけつぎだけではなく、左袖の周辺に、更に「補強」を施すという・・・気配りを見た瞬間・・・背筋がぞくっとするほど、唸ってしまったのだった。

 世の中には、資格などが無数にあり、その資格に溺れ、奢りまくった仕事をする人物がほとんどだが、ただそれだけでプロとは言えない。ゴミのような実績を引っさげ、Facebookなどで、研修に足繁く通っている姿や、自分が読んでいる書籍の紹介をしたり、如何にも自分はプロとして日々勉強していますよといったパフォーマンスが見苦しく思えて仕方がない。

 人様のことはどうでも良いのだが、この番組をじっくりと見てしまうと、掛け声やパフォーマンスだけの軽々しい人物が、如何にも衆目を集めるために行っているものなのかが、浮き彫りとなってくる訳だ。

 いやあ、「かけつぎ職人」の松本さん。・・・実にいい顔をしている。その一言一言が、全く奢りなく自然体であることに、感銘を受けてしまった次第。


▼熊本城宇土櫓
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  • posted by Chikao Nishida at 2015/1/23 03:59 am

牛崎英司シェフのこだわり料理

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 天草市内にあるホテルに足を運んだ。今回の目的は、私が提唱しているメニュー開発及び、牛崎英司シェフこだわり料理の取材にある。

 天候は生憎の雨。筆者の悪い癖で、僅か1時間の睡眠で取材に臨むこととなった。よって、熊本市内からの運転は非常に厳しい状況下にあったので、或る方に頼んで、天草往復移動に車を出して貰うことにした。同ホテルへ到着したのは、正午前。じわじわと雨が強くなってきたような嫌な感じ。

 到着後、挨拶を終え、即座に取材へ。写真の通り、素敵な料理がサーブされてきたのである。大変申し訳なかったのが、最後のデザートとコーヒーの撮影を怠った。・・・と言うか、あまりのご馳走であったので、胃袋の許容量を超えてしまい、後から撮影と言っていたものの、食す方もサーブする方も、忘れてしまったのが正直なところである。

 今回の撮影は、イメージとしては透明感のあるランチといった設定での撮影。若干、光量は少なかったものの、筆者の取材スタンスは、原則として照明機材を使わない。その場の環境光だけで、お客目線で料理を撮ることだ。特にガラス張りのレストランであれば、外の天候に相当左右される場合がある。大変リスクはあるものの、それが、自然な取材だろうと、リアリズムを貫き通すのみ。

 料理については、オードブなど、天草らしい海の幸のオンパレードから始まり、一つ一つに料理人の心が籠っていた。予算の制限もあるので、料理人のこだわりや技術がすべて発揮できるわけではない。ただ、双方の日頃からの情報交換が密である為に、具体的なメニューについて事前協議をせずとも、予想通りの牛崎英司シェフらしい料理がサーブされたのだった。

 ちなみに、メニュー開発の件は、現在公表の段階ではないので、写真及び解説は後日ということで・・・。


▼オードブル(小エビ、赤なまこ、うに、このしろ、新わかめ、うつぼ)
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▼ スープ(紫じゃがいものポタージュ、地牡蛎のフリット添え)
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▼魚料理(がらかぶのポワレ 小イカのソテー)
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▼肉料理(天草黒牛のタンのステーキと柔らかく煮込んだソテーで)
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▼パン(塩麹のゆず風味オリーブオイルソース、粒マスタード、ニンニクのペースト、オリーブオイル+天草の海の自然塩)
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▼サラダ(地産野菜とはるかのサラダ)
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  • posted by Chikao Nishida at 2015/1/22 04:21 am

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