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実録・昭和の豪傑(1)

▼思いのままに出張をしまくった頃の筆者(本田技研工業本社・東京青山にて/1987年)
chikaonishida


 昨夜、何十年か振りに、筆者が新聞社時代に大変世話になった役員の長女さんと話ができた。多分、正確には24年振りだろうと記憶するが、以前はちょくちょく顔は合わせるものの、話す機会も少なく、昨夜初めて長時間に亘り情報交換が出来たのだった。

 それで、今回はその当時の役員について書き綴りたくなったので、タイトルを「昭和の豪傑!」とした次第。

 さて、時は昭和時代。その役員は当時の新聞社では「カミソリ」と言われるほど、仕事でも切れ者であり、筋を通さねばとことん切れまくるという、超瞬間湯沸かし器のような方だった。

 局長、局次長であろうが、部長、部次長など、その役員の逆鱗に触れるものなら、直立不動で叱られまくるという有様。例えば、当時の部長を呼びつけ、炎天下の中、「おい、熊本城天守閣まで往復で走ってこい!」と言い放つのである。・・・よって、小生が社会人となり現在に至まで、その切れ方を上回る人物を見たことは1人も居ない。

 それだけ仕事に真剣、熱心で、社会正義を重んじるが余り、部長、部次長らの中でも、上司らしからぬ者を見つけては、言葉でボコボコにするほど気合いが入っていた。ちなみに、当時、小生は企画事業部の係長で、まだまだ青二才であった。

 昨夜の会話の中でその話をすると、「いやいや、現在父は88歳ですが、88歳らしからず切れまくっています。」と・・・現役当時と全く変わることなく、頑固一徹の人物には変わりはないと聞き、正直安堵した。しかしながら、当時、問題児であった筆者であるが、そのカミソリ役員には、何故か一度も叱責されたことがなかった。

  ある日のこと、筆者のデスクの電話に、その役員から内線が入り、「おい、直に私のところに来てくれ。」と呼び出された。

 これは雷が落ちるのかなと思いつつ、役員室へと足を運んだ。ノックをすると、「お、来たね。入りなさい。」と口調は実に柔らかだ。・・・しかし、この妙な優しさに、何かあるなと思いつつ、応接ソファーに背筋を伸ばして静かに座った。

 「な、一つお願いがあるんだが、聞いてくれるか!?・・・実は、先日一緒に行った店の女性から誘われて、来週水曜日にゴルフに連れて行くことになったんだが、5人も来るというので、来週水曜日に君も休みを取ってくれんかい!?」と。

 当時の筆者は自らも認める問題児であり、また、上司である部長とは犬猿の仲。役員からの願いは分かるが、部長が簡単に休んで良いと言うはずがない。「いや、来週の水曜日はセミナーも入っており、私が担当していますので、休みはちょっと無理かと・・・。」

 役員の顔つきが、じわじわと険しくなって行くのが分かった。「ちょっと、待て。○○部長の内線番号は何番だったかな?・・・ああ、分かった。・・・もしもし、あ〜私だが、来週水曜日、西田君を休ませるので、ちゃんとセミナーやってくれ。わかったか!」と怒鳴った。そして、また電話を掛けた。「お、私だが、総務部長か!?来週水曜日、西田君を休ませるので、いいな!」と・・・。

 店の女性を5人もゴルフ場へ連れて行くとは・・・これは困ったものだと思いつつ・・・「申し訳ないのですが、私の車はツーシーターなので、人を乗せられないので、部下の○○君も休ませて頂ければ良いかと・・・。」と進言した。

 役員曰く、「お、分かった。ちょっと、待て。・・・おい、○○君も休ませるので、分かったか!」と、今度は総務部長を叱りつけるかの勢いで電話で指示をした。・・・筆者の額には少々冷や汗が垂れて来た。

 そして、本当に水曜日の午前8時、女性たちが居る店へ迎えに行くことになった。車が待ち合わせ場所に近付くと、そこには背の高い金髪女性(オーストラリア人)がずらりと並んで待っていた。それから、筆者と部下二人の車に分乗させて、その役員が待つ場所へと移動した。

 役員、筆者、部下、そして5人の金髪女性、計8人は、阿蘇方面にあるゴルフ場へと向かった。・・・さあさあ、アウトからスタートだ。・・・先日、筆者が通訳した中で、彼女たちは「ゴルフはできるから、大丈夫!」と確かに言っていたはずなのに、ハーフを廻る中で、空振りバリバリの下手糞ばかりだった。よって、役員へ「ハーフで止めませんか!?これじゃ、ゴルフにならないので・・・。」と言うと、役員はさっさと支払いを済ませ、当時、近場にあったスケート場へと車を移動した。

 筆者はスケート得意で何も問題は無かったが、皆、スケートは初めてだと言う。これまた、1時間ほど滑って終了。・・・更に、役員は「阿蘇山の草千里へ行って、昼飯を食べるぞ!」と言い出し、熱々のうどんを食べに行った。

 そんなこんなで、大変な珍道中となった訳だが、無事、午後5時には金髪女性たちを送り届けたのである。

 やっと自宅に辿り着いたのが午後5時半過ぎだった。すると自宅の電話が鳴り始めた。「もしもし、ああ、私だが、君は今夜何か予定があるのかい?・・・ない!(笑)・・・分かった。じゃ、あの店に今日も行こうか!」と・・・。トホホである。

 筆者は慌ててシャワーを浴び、スーツ姿に着替えて金髪女性たちが居る店へ、その役員に随行して行った。勿論、新婚ほやほやの後輩には、筆者の進言で自宅へ帰すことにしてあげた。

・・・・・

 それから数日経ったろうか、再び役員から内線が入った。「お、ちょっと来てくれ!」。・・・前日、犬猿の仲である部長と一悶着あったので、それに対する雷が筆者に落ちるのかと思いつつ、役員室に足を運んだ。

 「おい、余り部長と遣り合うなよ!あいつはつまらん男だから、相手にするな!・・・分かったか!」と、今回は少々口調が荒かった。そこで筆者はニコリと笑い、「あのお、先日の金髪女性たちとの珍道中の写真のネガ持ってますが、如何しますか!?」と唐突に聞いたのだった。

 「おいおい、俺を脅す材料を持ったらしいが・・・。俺は本当に何十年振りかに、どまぐれた(熊本弁:道を外す、放蕩の意)ばい!!楽しかった。そーにゃ、楽しかった。」と、ケタケタと笑っている役員が眼の前に居たのだった。

 今の時代ではあり得ないことだが、これが良き時代と言われる「昭和の豪傑」の生き様だろうと。・・・思い出しつつ、吹き出しながら記事を書いている筆者がここに居る。


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  • posted by Chikao Nishida at 2014/8/22 12:00 am

アナログとデジタルの狭間で

▼「山河(さんが)」 書:西田親生

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 近頃、制作活動において、ふと、その作品の価値とは何ぞやと、自問自答することが多くなった。それは、筆者が追究しているクロスメディア世界の中で、アナログとデジタルが混在し複雑に絡み合い、どの時点における作品が、どれだけの価値を持つかに悩んでしまうことがある。

 また、モノトーンの世界を追究して行くと、写真と書との強い繋がりを持たせる為に、徹底的にモノトーンに入り込む。しかし、写真の場合は、特にデジタルカメラを使用すると、アナログな工学レンズで捉えた被写体であっても、C-MOSに映り込んだ時点でデジタル化されてしまう。フィルムを使おうとも、昔のように印画紙を薬品処理して現像機で仕上げる訳でもないので、出力機が完全にデジタル化してしまうのだ。確かに、ファインダーで捉えたここ一番の絵面をプリントアウトすると、水面のリフレクションや色彩に差異が出てくる場合も多々ある。

 書は、一枚の半紙に書き終えた時点で、二度と同じ作品を創り出すことはできない。その一点ものの価値は十分理解しているが、それを不特定多数の方々へ披露するとなると、個展等の展示会を開催するか、更により多くの方々へ披露する為には、デジタルスキャンを使って、デジタル画像化しなければならない。相当高額高精度のスキャナを使わねば、原本に近いデジタル処理は不可能となる。

 筆者がモノトーンの世界に入り込んだ理由の一つは、写真と書のコラボ的な作品を考えたのだった。しかし、デジタルとアナログを繋ぐ為には、どうしても最終的な処理はデジタルに委ねなければならないという、ジレンマが生じてくるのであった。

 書は、著名な作家が創造する作品以外は、殆ど高値で売れることはない。よって、写真そのものや、それをデジタル加工して二次的な作品、例えば、ポスターデザインなどの方が広告業界では高く売れてしまう。しかし、書は一点。写真は一度デジタル化すれば、二次的、三次的な作品を創り出すことが可能となり、際限なく複製が出来る。だったら、書の価値をより高める工夫をすべきだろうと考える筆者が居る。

 まあ、筆者は著名な書家でも写真家でもない訳で、要らぬ世話かも知れないけれども、作品の価値判断が、現状で良いのか否か・・・少々首を傾げることも多くなった。時にはマスコミに囃し立てられたタレント作家がテレビ番組にちょろちょろと出てくる。筆者のような一般人は、そのテレビを見ながら、価値のないものを刷り込まれ、偶像を信じてしまうという悪循環となってしまう。

 正直なところ、国内の書家の実態を全て把握することはできないにしても、柿沼康二氏のような人物を書家として見習いたいと日々感じている。また、写真に関しては、二次的処理を施された作品よりも、ファインダーで捉えた一点ものの作品を価値あるものとして受け入れたいと思う次第。

 デジタル時代となり、IllustratorやPhotoshopなどがデザイン業界を席巻し、日本でも「1億人総クリエーターの時代」と騒いでいるけれども、それは如何なものだろうかと、少々反旗を翻している筆者である。しかしながら、皮肉なことに、筆者の本業はデジタルな業務である。

 何はともあれ、アナログとデジタルの狭間で、現在、踠き苦しんでいるというのが本音である。・・・考えれば考えるほど、筆者にとって頗る難しい課題となってしまった。


▼「水面(みなも)」 書:西田親生
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▼「水面(みなも)」 写真・書:西田親生
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▼「竹林(ちくりん)」 写真:西田親生
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  • posted by Chikao Nishida at 2014/8/16 12:00 am

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