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押し付けは、自己満足の世界。

▼記事と写真は関係ありません

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 コロナ禍により、毎日、思い通りに外食できない状況下にある。本日は、コロナ禍前、熊本地震前のキュイジーヌ研究を兼ねて取材していた頃の料理を思い出したのだった。B級から高級料理まで、色んな食事処に足を運び、時には度肝を抜かれ、時には一口で店を出たこともあった。

 人気レストランは、大抵の場合「名物」というものが存在する。毎日食べに行っても飽きない「名物」である。仕事が忙しい時に、ふと思い出して急に食べたくなる、その店の「名物」。また、四季を通して、旬の食材を最高の調理法にて提供してくれる店の「名物」などなど。

 「名物」が存在する食事処は、当時は、いつも行列ができていた。大阪「自由軒」のドライカレー、横浜ハングリータイガーのハンバーグとステーキ、博多の屋台ラーメン、長崎思案橋の一口餃子店、熊本のビーフウィズライス店(廃業)などを思い出したのだった。

 ちょいと高級料理になると、東京浅草鉄板焼店の超レアな生々ハンバーグ(今は生では出さない)、ザ・リッツ・カールトン東京鉄板焼の蝦夷鮑地獄焼きと門崎丑ステーキ、ホテルオークラ桃花林のフカヒレ姿煮、ウェスティン都ホテル京都「洛空」のカレーライスなどである。

 振り返れば、「名物」と言われるものは、その店でなければ食せない、唯一無二なるオリジナル料理、または、レアな高級食材を使った料理に大きく分けられるようだ。地方では、その店でしか食せないB級「名物」が多いが、大都市部の五つ星ホテルなどでは、超レアな高級食材の「名物」が沢山ある。

 ただ、B級料理であろうが、高級料理であろうが、決して「押し付けメニュー」ではなかった。お客が我慢できず、気が狂うほどに食べたい料理を提供しており、常にお客目線で進化していた。たまさか、仏頂面で横着な態度の食事処もあるが、まあ、それはそれとして面白く奥ゆかしく思える。

 ところが、外海を知らぬ食事処は、お客のニーズを分析してメニューを開発するというよりも、自分たちの尺度だけで、それも行き当たりばったりの実験メニューを提供しているところが多いように思えてならない。それは、単なる自己満足の世界であり、絶対にファンが付くような料理になり得ない。

 何故なら、原価率ばかりに目が向けば、食材の質低下をもたらし、どんなに調理で誤魔化そうとしても、幅も深みも皆無となり、ワンパターンの不人気料理ばかりの繰り返しとなる。それが常態化すると、自己満足のための開発商品は「名物」になることもなく、客足は遠のいてしまう。

 コロナ禍となり、最近、頓に感じるのが、この自己満足メニューの存在。すこぶる単純な調理にて、ごちゃ混ぜ感を拭いきれぬ盛り付けにて、食欲をそそるどころか、二度と食したくないものが次から次へと。笑顔もない、会釈もない、客とのコミュニケーションも遮断しているとなれば最悪だ。

 更に、旅館やホテル経営側の人間がグルメ通でなければ、とんでもないメニューが飛び出してくる。舌馬鹿の経営者が大きな顔して、「おい、こんな料理はできないか!?」と言って、料理人を困らせるケース。舌馬鹿人間が開発させた料理は、客が喜ぶはずがなく、「名物」になるはずもない。

 要は、料理メニューが「押し付けメニュー」では、自己満足をお客に強要することになり、食す側のお客からすれば「要らぬ世話」になる。お客が頭を下げて「どうしても食べたいので作って欲しい!」と言うような「名物」でなければ、そのメニューは長生きするはずがない。

 「名物」のない食事処は、狭い地域の知り合いだけが常連となり、県内外からわざわざ足を運ぶ客などいない。勿論、気楽かもしれないが、折角プロの料理人として店を経営しているのであれば、もっと外海を見て、唯一無二なる「名物」を開発し、多くの人たちの幸せ作りに尽力されては如何だろうか!?

 いやはや、死ぬまでに、どれだけの「名物」を発見し、どれだけの「名物」に酔いしれることができるのか!?時間的にも物理的にも経済的にも限界はあるものの、できることならば、生きている内に、少しでも美味しい料理を口にしたいものである。粗食の一生よりも、幸せな食の一生を選びたい。


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写真・文責:西田親生

       

  • posted by Chikao Nishida at 2021/9/4 12:00 am

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