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あんなに魚から逃げていたのに!

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 生まれたのは、熊本県北部の温泉町 山鹿市。山鹿中心街は、北側に西から日輪寺山、震岳、不動岩などが盾となり、南は広大な田園地帯が続いている。温泉は800年の歴史を持ち、九州最高峰の泉質として名高く、温泉愛好家たちが全国から訪れる。また、夏場は山鹿灯籠祭りが8月15日・16日の二日間にわたって開催され、昔々は、県内外から50万人の観光客が足を運んだこともあった。

▼「山鹿温泉郷」弊社情報
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 12歳まで、その山鹿に育ったために、山の幸、川の幸には恵まれていたものの、新鮮な海の幸とは縁がなかった。当時、現代の冷凍技術があれば、それなりに新鮮な海の幸にありつけたのかも知れないが、昭和30年代は、魚となれば、リヤカーの行商が山盛りの氷と塩を積んで、その中に有明海の魚介類をぶっ込み、売っていた。一般的な魚といえば、塩サバがスタンダードな海の幸の一つ。塩焼きにする魚を七輪にのっけて、内輪でパタパタと焼かれていたのだろうと・・・。

 勿論、川の幸は豊富で、天然の鮎、鮒、鯉、鰻、スッポンなどは一級河川・菊池川に行けば、いくらでも獲れた。山手の小川には沢蟹がうようよしており、田舎の親戚の家に遊びに行くと、内子を含んだメスの沢蟹をそのままぶっこんだ、蟹飯が振る舞われた。内子がご飯に溶け込み、サフラン色に染まり、何杯もお代わりをしたことを覚えている。・・・まあ、それだけ自然がたくさん残っている証なのである。

 上述のように、生きたままの海の幸は、当時、相当高価なものであり、一般家庭では、なかなか口にすることができなかった時代である。よって、保存食のような、鯵のみりん干し、塩サバなどがご馳走だったので、幼い頃から・・・海の幸は、塩辛い魚、生臭い魚、干からびた魚ばかり。夕飯の時にはとことん逃げて回っていたのだった。

 手の平鯛を沢山頂戴すると、小骨ばかりが邪魔をして、箸が進まない。鯉の洗い・・・川の幸の刺身を酢味噌で食べても、泥臭くて不味い。気付けば、魚と聞くだけで、できるだけ避けて通りたかった自宅の夕餉である。

 ところが、大人になり、都市部に住むようになると、いつの間にか、海の幸があちこちで食せるようになっていた。専門レストランの台頭の時代だ。生きたオマール、伊勢海老、渡り蟹、鯛、鯵、車海老、雲丹、蛸、烏賊などなど、あらゆる海の幸が、生きたまま、目の前で捌かれている。その新鮮さは、昔からの悪いイメージを完全に払拭させてくれた。

 よって、自宅では、海の幸が食卓を飾ることが多くなってきた。完璧に肉党の家庭であったにも関わらず、皆、寿司や刺身、塩焼き、煮付けが大好きな家庭に様変わりしていった。

 昨日、熊本ホテルキャッスル ダイニングキッチン九曜杏にて、私にとっては今年最後の秋刀魚になりそうな、その塩焼きを注文した。在庫が三匹とのことだったので、二匹を食べることにした。長く独身生活をしていると、秋刀魚でさえ焼くのも面倒臭くなっている自分が居る。丁寧に塩焼きにされた秋刀魚は、何杯でもご飯が入るほど、満腹中枢が狂ったかのように、ご飯をかき込んだ。

 秋刀魚の塩焼き、ご飯、味噌汁、そしてお新香。これが、典型的な和食の組み合わせである。あの世界無形文化遺産に登録された、和食である。・・・しかし、満腹になった後、帰途についたが、今度は、「肉が食べたい!」と心の中で誰かが叫んでいる。

 人間というものは、なんと貪欲なのかと。特に「食いしん坊」の私がそうなのかも知れないが、食事ほど心を癒してくるものはない。食欲が失せた時は、何らかの病に蝕まれているに違いない。また、精神的にどん底に凹んでいる時も、同じこと。食欲が生きる力を与え、さらに免疫力や自己治癒力を増幅させ、生命の維持に繋がっている・・・。

 何はともあれ、料理を美味しく食せるほど、幸せなものはないと・・・つくづく、感じ入った次第。特に、心開いて語り合える人との食事に勝るものはない。それが、どんなに粗末なものであろうが、宮廷料理など比較にならぬほど、美味しく頂けるのである。


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  • posted by Chikao Nishida at 2015/11/5 01:54 am

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